やまなし地域支え合いコミュニティ再生推進事業(地域支え合いプロジェクト)とは

 社会福祉法人山梨県社会福祉協議会(以下、県社協)では、令和4年度から地域福祉活動の活性化により孤独・孤立を防ぐことを目的とした「やまなし地域支え合いコミュニティ再生推進事業」に取り組んでいます。令和5年5月には孤独・孤立対策推進法が成立するなど、孤独・孤立への対策強化が図られていくなか、県社協は、官民を超えて連携を図っていく「やまなし地域福祉応援プラットフォーム」を立ち上げました。

なぜいまこの事業に取り組むのか

 令和2年から発生した新型コロナウイルス感染症は、私たちの社会経済活動・暮らしに大きな影響を与えました。特に大きな影響の一つとして、自粛生活の中での社会とのつながりの減少が挙げられます。令和4年12月に内閣官房孤独・孤立対策担当室が行った孤独・孤立に関する実態調査「人々のつながりに関する基礎調査」によると、40.3%(対前年比3.9%増)の人が「孤独感を感じている」と回答しており、そのうち孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の58.5%は「5年以上」その状態が継続していると回答しています。また、「地域社会とのつながり」に関しても「悪くなった」(10.1%)、「やや悪くなった」(28.8%)と約4割の方が、地域社会とのつながりが感じられず、悪化していると回答していました。

 コロナ禍での地域の行事や集まりなどの活動や交流の場の休止は、これまで行われてきたものの意味や意義、価値を捉え直す時間になりました。「共」の場が衰退していくことは、孤独感や孤立の状況をつくりだすことにつながってしまうということを教訓にしながら、私たちは何を大切にし、どんな暮らしをしていきたいのか。経験したことをより良い暮らしや社会をつくるチャンスに変える、そうした取り組みが必要だと思っています。そこで、官民の垣根を超えた今後の地域づくりの推進をサポートする体制をつくり、地域の多様な主体が取り組む地域福祉活動を応援していき、一人ひとりが孤独を抱え、孤立になることを防ぎたいという思いから、山梨県と連携し、この事業に取り組むこととなりました。

この事業での取り組みのポイント

私たちはこの事業を通じて目指したい姿として以下の6つを掲げています。

1.多様な主体が参画するプラットフォームの形成により、それぞれの立場を超えて学び合い・支え合う仕組みができ、継続して多様な実践が行われている

2.多様な実践を支える支援者(アドバイザー)による伴走型支援が行われている

3.多様な実践を支える人材育成が継続して行われている

4.郷土の暮らしに根差した福祉教育の推進により、地域ならではの支え合い活動が楽しみながら行われ、日々の暮らしの中でつながりの感じられる場面が増えている

5.地域で行われている様々な支え合いの姿を記録し、発信していくことで、共同体のつながりの意義を再確認できるような情報発信が行われている

6.孤独・孤立を防ぐ取り組みに関し、調査・分析・考察・実践のサイクルが継続して行われ、多様な主体との協働の基盤となる情報が定期的に報告されている

それぞれの項目について、詳しくみていきましょう。

 現在、山梨県においてもSDGsやヤングケアラーなどテーマ・課題別に様々なプラットフォーム(情報が集まり、つながる場)が立ち上がっています。私たちが行う事業では、そうしたテーマ別に議論されている課題を「地域」という立場や年齢を超えたごちゃまぜの視点から見つめています。対話することを通じ、取り組みのベース(種)となるような「地域の課題と出会い、ともに考え、人と人とがつながる場」をつくりたいと考えています。それぞれの持つ知識や経験を持ち寄り、やってみようを育んでいく場所をつくりたいと思っています。

 実践の継続をサポートしていくためには、その取り組みに寄り添い、客観的な視点から助言をしてくれる存在が大切だと考えています。また、山梨にある「知」(研究者や実践家)との連携を積極的に推進することで、学術的・専門的な視点の知の蓄積や人材育成を図ることも、未来に向けての重要な活動の一つです。フィールドとなる場をともにつくることを通じ、チャレンジを応援したいと考えています。

 人づくりこそがさまざまな実践を支える基盤です。地域へのまなざしを持ち、地域の人とともに取り組む人が継続して育まれていくことにより、もっと地域が楽しく面白くなり、そして好きになる。そんな仕掛け人を様々な人との協力によりつくりたいと考えています。

 私たちが暮らす地域には、それぞれ様々な特色・文化・生活環境があります。この地で暮らし、生きていくということを一番良く知っているのは、やはりその地に暮らす住民の皆さんです。地域でどのように生活を営んでいるのか、課題や困りごとがあるときはどのように助け合いながら生きているのか。赤ちゃんは、子どもたちは、お父さんお母さんは、おじいちゃんおばあちゃんは、どんな暮らしをしているのか。普段のくらしを互いに支えている様々な人や環境に目を向ける福祉教育を通じて、すべての人が役割をもち、ともに生きていることを学ぶこと、伝えること。そうした福祉教育の場を広げていく活動を進めていきたいと考えています。地域にはたくさんの宝がいっぱいです。料理が得意な人、音楽が好きな人、車が好きな人、スポーツが好きな人。得意なことや好きなこと、機会があったらやってみたいなと思っていることがあります。そうした人たちが集まる場を増やしていくことで、地域とのつながりを楽しく育みながら、ともに生きることを伝えていく活動を推進したいと考えています。

 現在も山梨県内各地で地域ならではの支え合う活動が様々行われていますが、それぞれの情報が掲載されている場所に個別にアクセスしていかなければなりません。地域において行われている様々な取り組みを学び合ったり、実践のヒントにしたりする、そうした情報を提供できる場をつくります。また、これからの地域活動の支えの中心となる世代に「地元、地域っていいな」と感じてもらえるような情報発信ができたらと思っています。

 山梨県にも、実は孤独・孤立を防ぐための工夫や宝になる資源がたくさんありますが、それぞれが結びついていく取り組みが不足しているのが現状です。それらを結び付けていくきっかけとして、地域社会の状況を可視化していくための調査や分析が必要です。地域の方々とともに、様々な実践の基盤となる情報を整理しながら、協働した取り組みたいと思っています。


こうした6つの目指すビジョンの実現に向けて、みなさんと様々な取り組みを進めていきます。

 やまなし地域福祉応援プラットフォームはまだ動き出したばかりです。いままでにない、走りながら考えるチャレンジングな事業ですが、いろいろな方々と協力しながら、取り組んでいけたらと思っています!

今後ともやまなし地域福祉応援プラットフォームを、どうぞよろしくお願いいたします!

Written by
やまなし地域福祉応援プラットフォーム事務局(山梨県社会福祉協議会コミュニティ再生推進室)