多世代・多地域ごちゃまぜで、楽しみながら健康になれる居場所「蓬沢いきいきサロン(甲府市)」の取り組み【後編】

前編では、サロンの参加者、学生ボランティア、息子の武琉くんへのインタビューの模様をお届けしました。後編となる今回は、蓬沢いきいきサロンを運営されている猪狩裕太さん、理沙さんにお話を伺いました。

サロン活動を始めたきっかけ

矢 どのようなきっかけで立ち上げに至ったんでしょうか?

裕 どこから話せばいいかな?(笑)元々夫婦ともに介護の仕事をしていたんですが、世の中と福祉のあいだにつながりが薄いというか、ネガティブなイメージで捉えられてしまっている「壁」のようなものを感じていたんです。

実際に介護が必要な方や障がいを持たれている方たちと接する中で、それぞれいろんな得意なことやできることを持っていて、決して支えられるだけの存在ではないということを身近なところで感じていたし、そうしたことがあまり伝わっていないなと思って、もっとそうした持っている力をいろんな場所で生かせるような環境づくりが必要だと感じていたんです。

本人ができることや、やりたいことを周りがサポートすることができれば、本人も楽しいし、周りも嬉しいし、楽しくなるじゃないですか。周りを見渡したときに、現状そうした環境があまりつくれていないなぁ…とモヤモヤを感じていて。

また、ちょうどその頃、子どもが出来たタイミングだったこともあり、子どもたちを含めていろんな人と関わる環境がつくれたらと思ったことが背景にありました。

そう考えていた矢先に、新型コロナが発生しました。外出せずなるべく人と関わらないようにしなさいという風になってしまい、介護の仕事をつうじて人との関わりがなくなってしまうとどれだけ心身が衰えてしまうのかを実際に目にしていたので、これはマズイなぁと思ったんです。こんなときだからこそ、何かできることがあるんじゃないか?と考えたんです。

そこで、少しずつでも何かを変えていける環境をつくっていこうと思って、ボランティア活動を始めて、健康体操の教室だったり、甲府市すこやか地域サポーター養成(いきいきサロンの担い手)など様々な講座や研修会に参加するようになりました。

その中で「いきいきサロン」という存在を知り、わたしたちが暮らしている蓬沢地区には、いきいきサロンがなかったので、市社協や自治会の方にいきいきサロンを始めてみたいということを相談したところ「良いですよ」と言ってもらえたので、2人でどんなサロンにしようかと、いろんなことを話し合いました。

「誰もが気軽に来れて、ついでにいろんなことを体験したり、学べたらいいよね」とか、「その中で、介護や障害のことを知れたり、他業種同士の交流の場をつくったり、そういうきっかけができるんじゃないか?」とか。

「今後増えていく高齢者がいきいきと能力を発揮できて、それが子どもたちに還元できてプラスになるような、そんな場所をつくりたいよね」っていう話になり、世代や地域を超えていろいろな人と交流したり、様々な体験ができるみんなの居場所にしよう!ということになりました。

矢 最初はどのくらいのペースで始められたんですか?

理 最初は週5日です。

矢 週5日!(驚)

理 始めた当初、私たちは何にもコネクションがなかったため、地域にどんなニーズがあるのか把握できなかったんです。何曜日のいつの時間帯が一番来やすいのかな?といったことを知りたいと思い、まずは週5日で始めてみました。

もっと多世代・多地域ごちゃまぜで過ごせる場所を

裕 その中でもっといろんな人が混ざり合うようなイベントもやってみようと思って、それで始めたのが「多世代・多地域ごちゃまぜ健康まつり」です。

今年の3月に開催した健康まつりのチラシ

子どもからお年寄りまで誰もが楽しんでもらえるイベントとして、いろんな団体や企業をはじめ、甲府市役所のいろんな部署の方に協力をいただいて、実施しています。みんなの「やりたいこと」をお聞きしながら、来ていただいた方もそうですし、協力していただいている方も含め、お互いに良いものになるように心掛けています。

子どもたちも参加し、ボードゲームを体験
大人もゲームに興味津々!
いろんな団体がそれぞれの特徴を活かしたブースを出展
サロンの方々も活動を紹介するブースを出展

例えば「福祉」というものを前面に出しすぎてしまうと、どうしても福祉に関心のある人が中心になって、一般の方は来にくくなってしまうじゃないですか。

なのでスポーツだったり、健康測定だったり、ボードゲームだったり、いろんなコーナーをつうじて一般の方にも興味を持ってもらって、その中に認知症だったり福祉用具のコーナーを織り交ぜることで、「福祉」を知るきっかけを持てるようにしています。

また、シニアの活動ブースをつくって、一緒に体験できる機会を提供することで交流が生まれる場所をつくるなど、みんながWin-Winになれるような環境をつくることを大切にしています。

矢 そうした「多世代・多地域ごちゃまぜ」というキーワードは、サロン活動でも大切にされていますもんね。

裕 蓬沢いきいきサロンは、他地域からの参加もOKにしていて、他の地域から来られている方もたくさんいます。来られている方の地域でもいろんな活動が行われているんですが、身近だからこそ出にくいという場合もあるんです。

まだまだ「いきいきサロン」や「介護予防」に関しても、恥ずかしいとか、まだ私はそうした対象ではないと感じてしまう「壁」があるんじゃないかと思います。多地域だからこそ、気を遣いすぎず「いつ来ても、いつ帰ってもいい」という気軽さがつくれるのかもしれません。実際に参加された方から、こうした場所があるのがありがたいという声もありました。元気なうちから気軽に参加できる居場所がもっと広がったらいいなと思っています。

「楽しい」の大切さ

矢 いまサロン活動に関しても担い手の課題だったり、どのように運営していったらいいのかといった悩みも挙げられていますが、どんな働きかけが考えられますか?

裕 担い手の課題や運営の悩みについては、やっぱり「ごちゃまぜ」という視点が大事なんだと思います。いろんな世代・地域の方が混ざり合いながら、その中での「やってみたい!」に答えていくことで、みんなにとって楽しい活動になれば、その課題は解決していけるんじゃないでしょうか?先日開催した健康まつりでは、65歳以上の方がボランティアとして一番多く関わってくれて、参加した人たちは15歳以下が一番多かったんです。まさしくお年寄りが若者たちを支えるような光景が生まれていました。こんな風にいろんな人たちが活躍できる場所が増えていけば、もっとまちが楽しく元気になるんじゃないかと思っていて、これまでの経験を活かしながら、いろんなところに多世代・多地域ごちゃまぜの環境をつくるお手伝いができたらと思っているんです。


矢 いろんな人が活躍できる場が持つ力ってありますよね。サロン活動に参加されている方たちからは、どんな声が寄せられているんですか?


裕 例えば家にいてもずっと一人で、笑うことを忘れてたっていう人が、ここにきて久しぶりに笑うことができたとか、離れて暮らしている家族が久しぶりに母に会いに来たら、すごく元気になっていてびっくりしたとか。また、糖尿病で病院に通っている方が、お医者さんからずっと運動をしなさいと言われていたんですけど、自分では全然運動しなかったんですね。だけどサロンに通い始めてから久しぶりに健康測定をしたら、びっくりするくらい数値が安定していたんです。「何をしていたんですか?」って驚かれたみたいで、「いきいきサロンに通い始めました」って言ったら、「あなた絶対これを続けたほうがいいですよ」って言われた!って報告してくれる方がいたりして。そうしたいろんな方の声を聞いていて、やっぱり人間にとって「楽しい」って大事なんだなぁって思いました。だから、いかにその人たちに楽しんでもらうかということを日々試行錯誤しています。

実は介護職の方々ってこのスキルがすごく高いんですよね。どうしたらその人がいきいきと元気になれるかを考える実践を日頃からしているので、その力をもっと地域で活かせるような場所が増えればいいですよね。

矢 介護職での経験がサロン活動にも活かされているんですね。サロン活動でどんなことを大切にしていらっしゃいますか?

裕 例えば、絵手紙づくりの中での休憩に運動を入れたりとか、1つのメニューに集中しすぎず、合間にいろんな活動を織り交ぜていくことを大切にしています。健康づくりも一緒ですよね。睡眠や食事だったり、運動だったりいろんなこと組み合わせて健康じゃないですか。そういったいろいろな活動を選択できることが大事じゃないかなと思います。あとは、失敗を楽める環境をつくることも大事にしています。失敗って、みんななるべくしたくないと思っちゃうじゃないですか。でもそんな失敗も笑って楽しめるような環境づくりをいつも心掛けています。そういった環境づくりが、人を元気にさせる力になっているんじゃないかなぁと思います。


矢 先ほど池田さん(サロン参加者 前編をご覧ください)が、サロンのおかげで自宅での生活がすごく変わったってお話されてました。


裕 僕たちもご自宅での生活が変わったというのは初めて聞いたので、嬉しいです。やっぱりこういう「環境がある」ということが大事なんだと思います。

これからもみんなが楽しくいきいきできる環境をつくっていきたい

矢 蓬沢いきいきサロンでの日々をどのように感じていらっしゃいますか?

理 私は今までにない経験ばかりで毎日充実しています。高校を卒業した後、15年ほどずっと同じ施設で介護職をしてきたので、全くといっていいほど外の世界を知りませんでした。サロンを始めてから、営業、イベントの企画、ポスティング、行政や企業の役員の方との打ち合わせ、取材などを行っています。失敗も多いですが、いろいろな経験ができ充実した毎日を送っています。蓬沢いきいきサロンでは「いろいろな人と交流し、様々な体験ができる居場所」をモットーにしているんですが、私自身がそれを一番実感しています。

矢 サロン活動に参加されているお子さんたちに、どんな良い影響があったと感じていますか?

理 子どもたちは私たち夫婦に似て人見知りでしたが、サロンを始めてから自分から挨拶をしたり、ゲームをしていてわからない方に声を掛ける姿が見られるようになりました。学校でも学級役員に立候補するなど積極的になってきたように思います。特に娘(中1)は企画にも参加してくれるようになり「こうした方がわかりやすいよ」とか「○○さんは△△さんと同じグループにすると良いよ」など参加者の様子をよく見ていて、娘から学ぶことも多々あります。外部講師の方が私と間違えるくらい、大活躍してくれています。(笑)

矢 子どもたち、とっても頼もしいですねー!笑

最後に、これからの展望としてどんなことに取り組んでいきたいと考えていらっしゃいますか?

裕 みんなが楽しみながら健康になれる活動を継続していきたいと思っています。そうした活動の中で、子どもたちや学生と社会をつなげることにも取り組めたらと考えています。冒頭でもお話をさせていただきましたが、学生と地域の人や働く社会人との間に、まだまだ「壁」のようなものがあると思うんです。社会に出る前にいろんな仕事や働く人を知る機会があれば、もっとお互いにWin-Winになるじゃないですか。だから、いろんな地域にある仕事を知ったり、体験できる機会みたいなものも考えていきたいなと思っています。

叶うのであれば、学校と協力して、健康まつりのような体験し、交流できるイベントができたらいいなと思っています。先生たちのリフレッシュする機会や、親同士が交流する機会だったり、いろんな新しいスポーツやゲームをつうじて、子どものいままでとは違った新しい一面が発見できたり、遊びをつうじて仲良くなるきっかけができたり。みんなが楽しくいきいきできる環境をつくれたらと考えています。

そんな場所をいろんな地域の方々に協力してもらいながらつくっていけたらいいなと思っています。そのためにできることをやっていくっていう感じですかね。やり続けることで輪を広げていきたいなと思っています。

サロン活動をつうじて高齢者・ボランティア・子どもたち、それぞれが人との交流や体験を通じて、生活が変わり、関わり方が変わり、夢が生まれる。それぞれが持つ経験や知識、得意なことを一緒に分け合う時間を過ごせる場所は、少子高齢化が進むこれからの時代にとって、ますます大切になっていくのではないでしょうか。

蓬沢いきいきサロンについて

サロン実施日 毎週 月・火・木・金
時間 13時30分~15時30分
場所 蓬沢公民館(甲府市蓬沢1-12)
料金 200円(子ども・学生無料)

HP https://challesp.com/s/54321
Instagram https://www.instagram.com/igari484/

Written by 山梨県社会福祉協議会コミュニティ再生推進室