上野原市における生活支援体制整備事業の取り組み(後編)-「うえのはら支え愛の会 新一(しんいち)アシスト会」「とんびの会」「生活支援コーディネーター」へのインタビュー!-
上野原市は、平成28年度から高齢者が安心して暮らし続けられる地域を作っていく「生活支援体制整備事業」を上野原市社会福祉協議会に委託。さらに、令和6年度から同市西原地区のNPO法人にも委託し、市社協生活支援コーディネーター(以下、「SC」)2人とNPO法人SC1人が、市内9地区の支えあい活動をサポートしています。
上野原市社協は、地区を超えた交流と学びを目的とした「うえのはら講習会」を定期的に開催。平成27年度から取り組み、10年目を迎えた南アルプス市における「生活支援体制整備事業」を学びました。
後編では、現在上野原市内で支えあい活動に取り組んでいる「うえのはら支え愛の会 新一(しんいち)アシスト会」の作田順子さん、古根村明さん(新一区長)、「とんびの会」の土門淑恵さん、同市社協SCの溝呂木潤さん、花上佳範さんへのインタビューをお伝えします。
「うえのはら講習会」に参加しての感想を教えてください
作田:
アシスト会は活動を始めてから3年なんですが、やっと新一地区の中で認識され始めたかなと思っています。新一アシスト会には11名のメンバー(女性4名、男性7名、その中に区長、副区長、民生委員2名の方が所属)がおり、地道に活動をしています。南アルプス市では現在の体制になるまで10年かかったとのお話があり、まだまだこれからだなということを改めて感じました。
現在、区長さんが月1回「手書き便」という自治会月報を回覧しており、新聞に載っている内容や、新一区内のイベント(行事)活動、アシスト会の活動などが紹介されています。区長さんの手書きで、興味を引く仕上がりになっているため、みなさんが目を通してくれているということを感じています。
上野原市でもいろいろな取り組みが行われていると思うので、市内の取り組みを知ってもらって、体制が少しずつ広がっていってもらえたらいいなと感じました。
古根村:
今日一番驚いたのが、この支え愛の会活動に興味をお持ちの方が多くいらっしゃるんだなぁということでした。お会いしたことのない方も沢山おられたので、いろんなところで活動が行われていることを改めて知りました。南アルプス市では、理想に近い形までつくり上げられていると感じましたが、はたして我々もそこまで持っていくべきなのかを改めて考える必要があると感じました。
我々は3年前にグループ立ち上げに関する相談があり、自治会内の活動としてアシスト会を位置づけて、区費等を活用しながら活動することとしました。最初は「そんなこと誰がやるのか?」という反対の声も多くいただきましたが、話をする中で私を含め11名が協力してくれることになりました。
アシスト会の活動としては、名前の通りで簡単なことからアシストできないかと考え、できる項目(メニュー)を並べて、対象になりそうな住民に配布しています。
配ってはみたものの、なかなか頼み事が出てこないというのが悩みです。夏場は庭木の剪定の相談が増えるのですが、それ以外の頼み事は少ないのが現状ですね。
また、活動するメンバーが増えていかないのも悩みのひとつです。我々が活動している姿を見て、私も協力しても良いと手を上げてくれる方が来てくれるのを期待して、活動を続けていきたいと考えています。
土門:
自分たちも南アルプス市と目指すところは同じで、取り組みを進めていますが、あと一歩というところでしっかりとした組織をつくれていないと感じています。南アルプス市のお二人は生活支援体制づくりに継続して携わっていましたが、上野原市では同じように継続して関っている方が少ないので、これからの課題だなと思っています。
「とんびの会」は巌(いわお)地区にある「コモアしおつ」という住宅地で活動しており、月1回2時間、認知症の方や家族と楽しむ「オレンジカフェ」や「たのしい会」という集まりの場を開催しています。理想としては、そうした集まりの場で「こんなことをしてほしい」という声を聞いていけたらと思っています。住民向けのチラシの中で、どんなサポートができるかを紹介したりもしており、「とんびの会」の活動を始めてから、そうした住民の声も聞けるようになったという変化を感じています。
南アルプス市の事例(シニア世代の活動の応援隊MAGONOTE)にもありましたが、若い人たちとどうやって一緒に地域での支え合いの活動を広げていけるかが、今後の課題だと思っています。
協議体活動に関わって、感じている変化はありますか?
作田:
アシスト会では月1回集まって状況を共有する会議があるほか、年2回民生委員と一緒に地区内の対象者(主に75歳以上のひとり暮らし高齢者)への訪問活動を行っています。新一区は上野原の中心街で、地区のエリアが広いため、北と南に分かれてそれぞれのお宅に訪問して、状況を伺ったり、アシスト会の活動紹介をしています。中には引っ越しをされたり、施設に入所されたという方もいらっしゃるので、年2回は必ず訪問して状況を確認することとしています。
アシスト会での活動を行う中で、地域との縁やつながりが生まれたことが、とっても良かったと感じています。
上野原の人には多いと思うのですが、私自身も仕事は東京へ行って、上野原には寝に帰ってくるという感じの生活だったため、65歳で定年するまで、まったくと言っていいほど地域のことは知らなかったんです。
ずっと子どもに携わる仕事をしていたため、9年ほど前から子育てサロンを立ち上げて活動を始めました。地域にいるようになると、その中でのつながりや縁がたくさんあることが見えてきました。
私自身も、地域の中でいろいろなつながりが新たに生まれているので、活動に参加して良かったなと感じています。これからも続けていきたいと思っています。
また、「おせっかい」がやっぱり大事だなと思うようになりまして、元々性格的におせっかいなのですが、街の中で子どもや高齢者を見かけると、必ず声をかけるようになりました。そうしたところは変わったなぁと感じているところです。
土門:
私も民生委員を2期やっていたことがきっかけで、こういう活動が必要だなと思って立ち上げから参加しています。ただ、民生委員の立場からこの活動を推進するには難しいなぁと感じました。民生委員には民生委員としての仕事があるので、お互いの活動とうまく連携できたらいいと考えています。
これからの展望、こんなことができたらいいなぁと思っていることを教えてください
古根村:
お手伝いできる項目が10種類くらいあるのですが、実際に行ったことがあるのは3~4種類ですので、まだまだPRが足りていないのかなと感じています。
アシスト会の活動を紹介している毎月1回の地区の回覧ですが、当初は回覧だからあまり見ている人もいないかな?と思っていましたが、意外と見てくれている人が多いということがわかったんです。これはうまく使わないと損だなと思って、いまでも続けています。
土門:
今度見てみたいです!そういう活動もみんなで共有できるといいですね。
古根村:
見せるほどのものじゃないけどね(笑)。そんな感じで今後もPRを積極的にしていけたらと思っています。
また、南アルプス市さんのお話を聞いて、協議体の会議が沢山行われているということを感じたんですが、地域における職業人口の違いというものもあるんじゃないかなと思いました。
南アルプス市は農業が盛んな地域でもあるため、比較的地域に密着したコミュニティの基盤があることもポイントの一つかと思います。上野原市は都内に仕事に行かれている方が多いので、そのあたりでの工夫が必要かなと思っています。
土門:
南アルプス市さんの協議体の活動では男性の方の姿が沢山見られていたので、そのあたりも影響しているのかもしれないですね。
男性の方々に協議体の活動に関わってもらえるようアプローチしていくことも今後の課題だなと思っています。
私たちの活動の今後の展望としては、いま行っている活動を継続して広げていき、関わっていただける方を増やしつつ、活動を理解してくれる方を増やせていけたらと思っています。それをどうやっていけばいいかが悩みどころかな。
今日お聞きしたように回覧とかを活用することも一つの手かなと思いました。また、とんびの会のあるコモアではお祭りを開催したりもしているので、そういったところに参加して、一緒に楽しむ中で活動を広げていけたらいいなと思います。
上野原市社協の生活支援コーディネーターの溝呂木潤(ミゾロギジュン)さん(右)、花上佳範(ハナウエヨシノリ)さん(左)に、活動についてのお話を伺いました!
うえのはら講習会を開催したきっかけは?
各協議体の新たなる活動へのヒントやきっかけになればとの思いから年2回程開催しています。開催するテーマなどついても、各協議体の定例会で活動する上で知りたい、学びたい事をお聞きし、その中からピックアップして開催しています。
上野原市での現在の取り組みの様子を教えてください
上野原市の9地区それぞれで、できることに取り組んでいただいており、有償ボランティア(庭木の剪定、ゴミ出し、買い物支援等)、オレンジカフェ(認知症カフェ)の開催、地域交流イベントの開催・協力(バザー、夏祭り、どんど焼きなど)、他団体との協働・協力、地域ふれあい交流事業開催(地域の学校運営協議体とコラボ)、駐在所とのコラボ活動(見守り活動&巡回連絡(地域防犯パトロール等))、多世代交流事業(子育てサロンなどと協働)、民生委員とのコラボ活動(見守り活動&困りごとニーズ探し)、買い物ツアーなどに取り組んでいます。各地区で活動されている方々とのつながりで実施されているものが多いことが、上野原市の特徴だと感じています。
生活支援コーディネーター(以下、SC)として、どのような形で関われているのでしょうか?
協議体が行う活動や定例会、イベントなどにできる限り参加し、地域の皆さんとコミュニケーションを図りながら、一緒になって支え合う地域づくりを進めています。
また、常にSC2名で行動するようにしており、協議している内容や進めている事業に対し、分からないといったことがないようにしています。地域の方々やSC同士の信頼関係を大切にし、途切れることなく継続して支援できるよう、心掛けています。
SCとしての関りの中で大切にしていることは何ですか?
何事も「協働」で行うということを大切にしています。協働は決して一人ではできない事なので、私達SCも地域の一員となり、一緒になって意見を交わし、試行錯誤ながらつくり上げていく仲間になれたらと思っています。その中で、地域のことを想いながら、必要な支援や助言をしていくことが、私たちの役割だと思っています。
また、活動の中での「結果を急がない」ことも大切だと考えています。まずは、既に地域で継続して行われている見守り活動や支え合いの活動がとっても素晴らしいことなんだということ、その大切さや価値に気づいてもらうことがもっとも大事であり、私たちSCが、地域の方々に伝えていかなければならないことだと思っています。
最後に、これからの地域づくりに向けた抱負を教えてください!
「ゆっくり、じっくり」をキーワードに、これからも地域の皆さんと一緒に取り組んでいきたいと思います!
インタビューを終えて
今回の訪問取材をつうじ、生活支援体制整備事業の取り組みは上記のキーワードのとおり「ゆっくり、じっくり」と地域の方々と創り上げていくものであるということを感じました。
現在、県内各地で生活支援体制整備の取り組みとともに、SCが活動していますので、他の地域での活動に関しても今後取り上げていきたいと思います!
Written by コミュニティ再生推進室