eスポーツをつうじた新たな居場所づくり 多世代交流を目指した山中湖村社協の取り組み(後編:山中湖社会福祉協議会インタビュー)
社会福祉法人山中湖村社会福祉協議会(以下、山中湖村社協)は、令和5年度からeスポーツを活用した新たな居場所づくりを進めています。
新型コロナウイルス感染症により生じた健康不安や、周囲の人々との交流の減少などの課題を抱える中、みんなが気軽に集まり多世代で交流ができる場をつくりたいと考え、地域のサロン活動での『健康ゲーム(eスポーツ)』の推進をはじめ、新たに子どもたちの放課後の居場所『すまいるSPACE』や長期休み中のゲーム大会『NEW PLACE』などの企画を立ち上げ、村の教育委員会・小中学校の協力を得ながら、子どもたちの居場所づくりや多世代交流の場を展開しています。
また、この取り組みを広く住民の方に知ってもらおうと、日本アクティブ協会が認定する「健康ゲーム指導員」を職員全員で取得し、日々奮闘しています。
※本会(山梨県社会福祉協議会)は、山中湖村社会福祉協議会の取り組みをやまなし地域支え合いコミュニティ再生推進事業(地域支え合いプロジェクト)のモデル事業として選定し、この取り組みを支援しています!
前編に続く後編は、eスポーツを活用した居場所づくりを推進している山中湖村社協の羽田さんと長田さんへのインタビューをお届けします。
-サロン活動での健康ゲーム(eスポーツ)は、どのように進められてきたんですか?
長田 山中湖村は5つの地区に分かれていて、いま4つの地区でサロン活動が行われています。それぞれの代表者を中心に年間の企画を立てているのですが、今年はその中に健康ゲーム(eスポーツ)を活用してもらったり、村がやっている地域リハビリテーション事業のメニューなどを活用してもらっています。社協の場合は、介護予防の視点だけでなく、地域づくりでの視点も含めて取り組んでいけたらなと思っています。地域ごとの特色があるので、そういったものを出来る限り活かしながら、住民主体で自分たちの居場所づくりを進めてもらえるようにサポートをしています。
-モデル事業としての取り組みを進めて半年ほどが経ちますが、どのような手ごたえを感じていますか?
羽田 まだちょっとおっかなびっくりなところがあるかな。ゲームに慣れ親しんでいる世代ではないので、ゲームと高齢者というものが結びつかない方もまだまだ多いと感じています。ですが、体験を通じて面白かったからもう1回プログラムに入れたい!という要望も出てきたので、やってみると印象も変わるんだなということを実感しています。
長田 最初はやっぱりみなさん不安だったと思います。ゲーム!?って感じの反応でしたね。でもやってみると楽しかった!という声が寄せられて、ほかのサロン活動でもプログラムに活用してくれているので、どんどん展開していけたらと思っています。また、サロン活動以外にも長寿会(老人クラブ)という集まりも実施されているため、今年は地区予選から進めていくような企画を実施できたらと思っています。サロンに参加されていない方々もたくさんいるため、普段関われていない人たちにも参加していただけるよう、掘り起こしていきたいです。
―子どもたちの居場所づくりにもつながっているそうですね。
羽田 今後学校を通じてチラシを配布する予定なんですが、毎週月・水曜日に社協のスペースを活用して、子どもたちの居場所活動を行っていく予定です。
昨年は冬休みと春休みなどの長期休みに活動を行ったのですが、トータルで延べ130人の子どもたちが参加してくれました。社協の事務所内が、子ども達の笑顔や歓声に包まれ、私達職員も子どもからパワーをもらい、活動の励みになりました。いまのところ、社協の場所が山中地区なので、社協と反対側の地域(平野地区、長池地区、沖新畑地区)の子どもたちは参加しにくくなってしまっているので、そこが課題かなと思っています。
山中湖村には学童(放課後児童健全育成事業 以下、学童)はあるんですけど、児童館がないんです。例えばスポーツ少年団に入っている子たちは練習が平日にあり、学童に入っていないことが多いため、社協が児童館のように「開放しているからいつでも気軽に来て良いよ」っていう場所にできれば、子どもが社協に行っているっていうのがわかるので、親も夕方の時間帯に少し余裕ができるんじゃないかなと思っています。
長田 そうすれば、中学生と小学生が一緒に過ごすきっかけにもなるんじゃないかと思っています。一緒にゲームをしたり、宿題を教えてもらったりと、子どものうちから世代を超えて助け合うような関係性が生まれたりしたら素敵だなぁと思っています。
羽田 通常の放課後活動に加えて長期の休み期間中は、もう少し午前も午後も開けるようにできればなと考えています。「午後は予定あるけど午前は暇だから来たー!」とか「午後なら送ってもらえるから、午後だけ来た!」という子どもたちがいたので、子どもたちの予定に合わせて、来てもらえるようにしたいなぁと思っています。
以前夏休みに子ども食堂を開催したんですけど、みんなでビンゴゲームをやった時に中学生が小学生にヒントを出してくれたり、一緒に活動しながら教えっこしてくれたりして、同じ地域に住むお姉さんお兄さんとして関わってくれている姿がとても印象的でした。
山中湖村には高校がないので、隣の富士吉田市や御殿場市の高校に通学したり、村から出て寮に入る子もいます。村内での小中学生の日中の過ごし方にも着目し、小学校や中学校とのつながりを大切にしつつ、子どもたち同士や地域とのふれあいの場所を増やしていけたらと思っています。
理想はマサエさんのお話(前編)にあったように、いつでもここに来れば誰かがいるって環境っていいですよね。小菅村社会福祉協議会(https://www.kosugeshakyou.com/)ではそんな地域の拠点をつくられているというお話を伺っています。近所のおじいちゃん、おばあちゃん、子どもたちがフラッときてお茶を飲んで喋っていく、山中湖村ならではのそんな場所があるといいなと思っています。
長田 eスポーツを活用していろんな展開方法が考えられ、視野が広がってきたように感じています。みんなが気軽に集まり、多世代で交流ができる場をこれからもっと広げていけるよう取り組んでいきたいと思います!
eスポーツをつうじて、新たなコミュニティづくりへの視野が広がり、住民主体の活動や教育とのつながりを活かした取り組みを進めている山中湖村社協。健康づくりや子どもたちの居場所など、地域のニーズに合わせての展開は、他の地域でも参考にしていただける内容ではないでしょうか。
また、山梨県内では甲府市社会福祉協議会(https://www.kofu-syakyo.or.jp/)や昭和町社会福祉協議会(https://showashakyo.or.jp/)などでもeスポーツを活用した取り組みを行っており、いつか地域対抗戦なんかもできたら楽しそうだなぁ…と夢を膨らませております。そんな機会を一緒にどこかでつくっていけたらと思っています!
Written by 山梨県社会福祉協議会 コミュニティ再生推進室